「悟り」の開き方 後記

何でそんなものを書いたか、ってことには、あの冒頭に書いた理由以外に、もうひとつの理由がある。
それは、仏教批判、いや、ある種の文明批判、なんだ。
もともと、動物はあんなことを考えなくてもよかった。
なぜなら、人間以外の動物ははじめからそんなことはわかっているから。
それが、動物の一種類であるはずの人間は「言葉」を覚えたがために自我を持つことになってしまった。
そして、その自我があるがゆえに、ほかの人との乖離を起こし、無我を見失ってしまった。
「気持ち」を言葉で表すことなんてしなければ、自我も無我も無く。
そこには「事実」だけがあったはずだ。
でも、人は、気持ちを言葉で表そうとすることを試みた。
はじめは、腹が減ったとか、痛いとか、そういう単純なものだっただろう。
それは効率よく生きていくためにも有効に利用できるからこそ、あらわす必要があったのかもしれない。
でも、それらがどんどん高度化、複雑化していった結果、悲しいとか、楽しいとか、そんな言葉をもつにいたった。
そしてそれは、自我を生んだんだ。
もともと、ほとんどの言葉は、自分自身にしか理解できないものだ。
悲しい、って、いったいどんな意味があるのか、それは人それぞれ。
楽しいも、うれしいも、怒るも、そして椅子にしてもテレビにしてもそう。
ほとんどの単語は、自分自身だけがイメージする「もの」があるが、それは自分にとってのみのイメージ。
ほかの人とは共有できない。
でも「なんとなく」同じ物をさしているのが解るというレベルの共有をもってして、人は言葉によるコミュニケーションを可能にしている。
これが、形あるものをさす場合や、ほんとに単純な生理的な感情を表す場合はまだ正確に伝わるけれど。
高度で複雑化した感情を言葉で表そうとしたときには、まるきり、共有の意味をなさない。
にもかかわらず、人は言葉で表した瞬間に、ほかの人もそれを理解してくれることを期待する。
そしてその結果、人は世界を共有できなくなった。
人にはわかりえないものを伝えたい欲求に駆られ、言葉をひねくりまわし、なおさら解らないものとし。
そのうちに、自分がわかっているものは崇高なのだと勘違いを起こし。
人にはわからない言葉を使っているにもかかわらず、わからない人が悪いのだと思い込み。
わかるものこそが偉いのだなどといった、過ちを犯すようになった。
仏教の経典にせよ、キリスト教の聖書にせよ、結局書いてあることの根源は単純なことに過ぎない。
高々数人の人間がはじめたことが、それほどまでに高度化されているはずはなく。
ただ、はじめた人の地位が多少高く社会的影響力をもてたからこそ、それが広まるにいたったに過ぎず。
各宗教がはじめに伝えようとしていたことは、「愛すること」そのものに過ぎない。
それが、自分の考えを理解してほしいという欲求に駆られた後世の人間の手によって、複雑怪奇なものに変わっていった。
理解してもらわんとするがために言葉をひねくりまわしたり。
ほかの人が理解できるものでないことをいいことに、自分の地位を高いものとしておくために利用せんがため。
キリスト教やイスラム教、仏教が生まれたころの人の寿命は30年から長くて50年だ。
その中で考えられる哲学には限りがある。
そして、苦労も知らないボンボンが途中から開眼して得られる真理なんてたかが知れている。
それをあーでもないこーでもないとひねくりまわすことになった理由は。
「そんな単純なことを理解できず、人との関係を大切にしようとも考えないおろかな人間によるものなのだ」
それが、僧侶や神官の本当の姿であって。
いかに「神にすがる」ことがおろかなことなのかを、明確にあらわしている。
本当は、「神にすがったって何も無い」んだ。
自分自身が、主人公であり、自分自身を、頼らなければならないのだから。
産業革命以前の科学技術が発展する前の世界では、宗教こそが、学問の最高峰だった。
「言葉」の発生から現在にいたるまでの長きにわたって学問の最高峰にあった宗教を持ってして、高々この程度の結果しか残せなかった。
いや、後退したと言っても過言じゃない。
文明は、その程度のことしか、残せていないんだ。
文明の発展に、何があるんだろう?
俺自身は、文明の最前線に居るのかもしれないが、文明がもたらすものに、さして期待が出来ない。
本当は、もっと違うところに目を向けなきゃいけないんじゃないかと、そんな風に思う。
わかりきったことだけど、文明の発展は、幸せなんかもたらさない。
どちらかといえば、文明ではなく文化を発展させなきゃいけない。
でも、人の目が向くのは、文明のほうだ。
伝えるために必要な言葉は、少なくてかまわない。
いや、少なければならない。
人間は、もう少し、賢く、ならなくちゃいけないのかもしれないと思う。
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